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メール認証

TLS-RPT(SMTP TLS Reporting)

2026年4月15日 更新

概要

TLS-RPT(SMTP TLS Reporting) は、メール送信サーバーが受信ドメインとの SMTP 接続で発生した TLS エラーを報告する仕組みです。RFC 8460(2018年)で定義されています。

MTA-STS や DANE を導入した受信ドメインは、送信サーバーが TLS 接続に失敗した場合にメールが配送されない可能性があります。TLS-RPT はこの「見えない配送失敗」を可視化します。送信サーバーが TLS 接続の成功・失敗の統計を JSON レポートとして受信ドメインに送付するため、ドメイン管理者は証明書の問題や設定ミスを早期に発見できます。

DMARC の集計レポート(rua)がメール認証の結果を報告するのに対し、TLS-RPT は SMTP トランスポート層の暗号化状態を報告する補完的な仕組みです。MTA-STS を導入する場合、TLS-RPT を併用してエラーを監視します。

仕組み

送信サーバーが TLS 接続の成否を 24 時間単位で集計し、受信ドメインの DNS で指定されたアドレスに JSON レポートを送付します。

レポートの生成と送信

TLS-RPT のフローは次の通りです。

  1. 送信サーバーが受信ドメインへの SMTP 接続で TLS ネゴシエーションを試みる
  2. 接続の成功・失敗を記録する
  3. 一定期間(通常 24 時間)の集計結果を JSON レポートとして作成する
  4. 受信ドメインの _smtp._tls.ドメイン の TXT レコードで指定されたアドレスにレポートを送信する

DNS TXT レコード

_smtp._tls.example.com.  IN  TXT  "v=TLSRPTv1; rua=mailto:tls-reports@example.com"

v=TLSRPTv1 はバージョン、rua= はレポートの送信先です。メールアドレスのほか、HTTPS エンドポイント(rua=https://tls.example.com/report)も指定できます。

レポートの内容

TLS-RPT レポートは JSON 形式で、次の情報を含みます。

  • 報告対象期間(開始日時・終了日時)
  • 受信ドメイン名
  • ポリシーの種類(MTA-STS / DANE)と適用されたポリシーの内容
  • 成功した接続数
  • 失敗した接続数と失敗の種類

失敗の種類には次のようなものがあります。

失敗タイプ意味
starttls-not-supported受信サーバーが STARTTLS に対応していない
certificate-host-mismatch証明書のホスト名が MX と一致しない
certificate-expired証明書の有効期限が切れている
certificate-not-trusted証明書がパブリック CA から発行されていない
validation-failureMTA-STS ポリシーの検証に失敗した
sts-policy-fetch-errorMTA-STS ポリシーファイルを取得できなかった

DMARC レポートとの違い

DMARC の rua レポートはメール認証(SPF、DKIM、DMARC)の結果を報告します。TLS-RPT はメール配送の暗号化(STARTTLS、TLS バージョン、証明書の有効性)に関する報告です。どちらも rua= タグを使いますが、DNS レコードの場所が異なります(DMARC は _dmarc.ドメイン、TLS-RPT は _smtp._tls.ドメイン)。

設定例

レポートの送信先にはメールアドレスと HTTPS エンドポイントの両方を指定できます。

基本設定(メールでレポートを受信)

_smtp._tls.example.com.  IN  TXT  "v=TLSRPTv1; rua=mailto:tls-reports@example.com"

HTTPS エンドポイントへ送信

_smtp._tls.example.com.  IN  TXT  "v=TLSRPTv1; rua=https://tls-reports.example.com/v1/report"

大量のレポートを受信する場合、HTTPS エンドポイントで自動処理する方が効率的です。

複数の送信先を指定

_smtp._tls.example.com.  IN  TXT  "v=TLSRPTv1; rua=mailto:tls-reports@example.com,https://tls-reports.example.com/v1/report"

メールと HTTPS の両方にレポートを送信できます。

MTA-STS との併用

TLS-RPT は MTA-STS と組み合わせて使います。

_mta-sts.example.com.    IN  TXT  "v=STSv1; id=20240201"
_smtp._tls.example.com.  IN  TXT  "v=TLSRPTv1; rua=mailto:tls-reports@example.com"

MTA-STS を mode: testing で導入し、TLS-RPT でエラーを監視してから mode: enforce に移行するのが推奨フローです。

確認方法

TLS-RPT の DNS レコードは dig で確認できます。

dig TXT _smtp._tls.example.com
;; ANSWER SECTION:
_smtp._tls.example.com.	3600	IN	TXT	"v=TLSRPTv1; rua=mailto:tls-reports@example.com"

v=TLSRPTv1 で始まるレコードが存在すれば TLS-RPT が設定されています。

外部の視点からも確認したい場合は、Labee Dev Toolbox の DNS API を使うと、外部の視点から TXT レコードを取得できます。

curl "https://labee.dev/api/dns?domain=_smtp._tls.example.com&type=TXT"
{
  "success": true,
  "data": {
    "domain": "_smtp._tls.example.com",
    "records": {
      "TXT": [["v=TLSRPTv1; rua=mailto:tls-reports@example.com"]]
    }
  },
  "error": null,
  "meta": { "responseTime": 123 }
}

よくある問題

TLS-RPT は MTA-STS または DANE と組み合わせないと実効性が低く、レポートの量や解析方法にも考慮が必要です。

MTA-STS なしで TLS-RPT だけ設定する

TLS-RPT は MTA-STS または DANE と組み合わせて使う仕組みです。どちらも設定していない場合、送信サーバーが TLS-RPT レポートを生成する動機がありません。MTA-STS の導入と同時に TLS-RPT を設定します。

レポートが大量に届いてメールボックスを圧迫する

TLS-RPT レポートは JSON を gzip 圧縮した添付ファイルとして届きます。大量のメール送信を受けるドメインでは、レポートが 1 日に数百通届くことがあります。専用のメールアドレスを用意するか、HTTPS エンドポイントで自動処理する構成に変更します。

レポートの JSON を解析できない

TLS-RPT レポートの JSON は RFC 8460 で構造が定義されていますが、手動で読み解くのは手間がかかります。Hardenize や Postmark の TLS-RPT 解析ツールを使うと、視覚的にエラーの傾向を把握できます。

証明書のエラーに気づかない

TLS-RPT レポートを設定していても、定期的に確認しなければ証明書の有効期限切れや設定ミスを見逃します。レポートを自動解析し、エラー率が閾値を超えたらアラートを送る仕組みを構築します。

実際のドメインで確認してみる

登録不要、無料です。ドメイン名を入れるだけで外部からの見え方を確認できます。

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関連用語

メール認証

MTA-STS(Mail Transfer Agent Strict Transport Security)

メール送信サーバーに TLS 暗号化の強制と証明書検証を要求し、SMTP のダウングレード攻撃を防ぐ仕組み。RFC 8461 で標準化。

メール認証

STARTTLS

既存の平文プロトコルを TLS 暗号化にアップグレードする SMTP 拡張コマンド。メール配送経路の暗号化に広く使われる。

メール配信インフラ

MTA(Mail Transfer Agent)

SMTP を使ってメールを中継・配送するサーバーソフトウェア。Postfix や Exchange が代表的な実装。

メール認証

DMARC 集計レポート(Aggregate Report)

DMARC が受信サーバーから送信元ドメインの管理者へ送る、メール認証結果の統計データ。ポリシー強化前の影響分析に使う。

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